名古屋大学 大学院工学研究科 土木工学専攻 構造・材料工学講座 構造解析学グループ
計算力学・最適設計学研究室
数理的構造デザインによる
革新的ものづくり
当研究室では、計算力学・最適化数学・スーパーコンピュータを用いた数値シミュレーションにより、最適な構造を見出す「数理的構造デザイン」の研究を行っています。
研究内容
本研究室は、計算力学・最適化数学・スーパーコンピュータを用いた数値シミュレーションによって最適な構造を見い出す「数理的構造デザイン」の研究を行っています。具体的には、構造の超軽量化および剛性や靭性、エネルギー吸収性能、振動特性、熱伝導性能、流体抵抗などの力学的性能を最大化/最小化/制御するための「トポロジー最適化(Topology Optimization)」の研究を行っています。これらの研究は「計算力学(Computational Mechanics)」の範疇に属します。計算力学は「21世紀科学のキーテクノロジー」として知られ、中でもトポロジー最適化は現在最も注目されている先端研究分野のひとつです。
構造の力学的性能は、構造の「かたち(構造幾何)」と「材料」のふたつで決定されますが、その性能を最大にするような最適構造を経験則で見い出すことは不可能です。トポロジー最適化は、それを可能にするパワフルな設計理論であり、それにより構造の最適なかたち(ストラクチャーデザイン)や極限的な材料物性値を発現するための材料微視組織を見い出すこと(マテリアルデザイン)ができます。
トポロジー最適化は、ほとんどすべての工学分野に適用できることから、本研究室では土木・建築分野に留まらず、自動車・機械分野や航空宇宙分野、ロボティクス、マテリアルサイエンスをはじめ、様々な分野と連携した多次元・領域横断的な研究を行っています。
構造の力学挙動は、構造単独で決まることは少なく、例えば強風で揺れる高層ビルのように、周囲の流体との相互作用を考慮することも必要です。そこで本研究室では、スーパーコンピュータ「富岳」のような超並列計算機に適した、構造と流体の統一解法の研究も行っています。コンピュータの計算性能は指数関数的に向上し続けており、例えば2021年発売のiPhone13は、1997年に世界一であった米国のスーパーコンピュータIntel ASCI REDのほぼ同等の計算性能です。つまり、「現在のスーパーコンピュータ」は「近未来のパーソナル・コンピュータ」であり、ものづくりのデジタル革新のためには、スーパーコンピュータの性能を引き出せる計算方法の研究は必要不可欠です。
一方、近年、「積層造形(Additive Manufacturing)」、つまり3D-printerによる技術革新が産業構造に大きな変革をもたらす時代となりました。トポロジー最適化はその積層造形と親和性が高く、両者を融合した新しいものづくりに大きな期待が寄せられています。本研究室では、積層造形を念頭においたトポロジー最適設計法の研究開発を行い、その「革新的ものづくり」を通じてこれまでにない先端構造・材料の開発を目指しています。